七工匠から第2弾となるライカMマウントレンズ、7Artisans 35mm F2が発売になった。海外のカメラ情報サイトなどを通じて、その存在をチェックしていた人は少なくないはずだ。第1弾の7Artisans 50mm F1.1は希代のクセ玉として注目を集めたが、本レンズはどんな個性を見せてくれるだろうか。
7Artisans 35mm F2をひと言で表すと、ズミクロンリスペクトだ。ライカMマウントで35ミリF2というスペックは、いやが上にもズミクロンを想起させる。小振りでフォーカシングレバーを備えた鏡胴は、6枚玉のズミクロンを思わせる佇まいだ。ライカファンならばついニンマリとしてしまうだろう。しかしながら、写りはズミクロンとは方向性が異なり、7Artisansシリーズらしいクセ玉である。このあたりは後ほど実写例を見ていただこう。
本レンズは距離計連動可能なライカMマウントだ。価格の安いレンズだけに、距離計連動精度が気になるところだろう。第1弾の50ミリF1.1は距離計連動アジャスト機能を搭載し、ライカファンの度肝を抜いた。これまで距離計連動をユーザー自ら調整するという発想がなかったからだ。7Artisans 35mm F2もこの距離計連動アジャスト機能を搭載している。ただし、工場出荷時のまま実写してみると、ほぼジャストでピントが合っていた。中遠距離はもちろん、近接開放でもピントが合う。広角の7Artisans 35mm F2は被写界深度が深く、距離計連動精度についてはそれほどナーバスにならずに済むだろう。もし、ピントが極端にズレるようであれば、そのときは距離計連動アジャスト機能のお世話になればよい。
さて、7Artisans 35mm F2の描写力はどうだろう。開放はわずかに柔らかいが、コントラストと色ノリは申し分ない。1~2段絞るだけで実に端正に写る。こう記すと、ズミクロンに似た安定感のあるレンズをイメージしがちだが、そこは7Artisansシリーズだけあって、ちゃんとクセの強さも備えている。堅実な中心部に対し、周辺部は描写が緩い。樽型の歪曲収差があり、前ボケがぐるぐるボケになることも。ほどよくローファイな味付けが、7Artisans 35mm F2の妙味と言えそうだ。
純正のライカレンズは言わずもがな、サードパーティーのライカMマウントレンズでもけっこうな値段がする。そうした中、七工匠の7Artisansシリーズは手軽な価格帯を実現しているのが特徴だ。そして単に安いだけではなく、描写しかり、外観しかり、ちょっとした遊び心が粋だ。ライカと写真を楽しくしてくれるレンズである。
●PRODUCTS LIST