澤村徹のカメラガジェット放浪記 第18回「開放F1.5の秘めたる個性」
銘匠光学 TTArtisan M21mm f/1.5


写真・文:澤村 徹

 

 

Mマウントレンズを連発する銘匠光学から大口径超広角レンズ、TTArtisan M21mm f/1.5が登場した。周知の通り、TTArtisanは高描写タイプに特化したシリーズだ。本レンズもその基本スタンスを保ちつつ、いくつか新たな試みも見られる。大口径超広角としてどんな仕上がりなのか、早速見ていこう。

 

まず、付属アクセサリーで大きな変化が見られる。フォーカシングレバー付きのクラシックな鏡胴、金属製の角型スリットフード、この2点は従来製品を踏襲している。加えて本製品は金属製の丸型フードとカブセ式フロントレンズキャップが付属しているのだ。丸型フードはなだらか曲線でテーパーし、非常に手の込んだ作りになっている。先端にネジ切りがあり、72mm径のフィルターが装着可能だ。一方、カブセ式キャップはロック機能を搭載しており、他に類を見ない高品位な仕上がりだ。装着時にレンズ本体と一体感があり、デザイン面にずいぶんとこだわりが感じられる。

 

レンズ構成は11群13枚。TTArtisanの定番とも言える角型スリットフードが付属。本フードの上からかぶせるフロントキャップも装備する。

 

ラッパ状に広がる丸型フードが付属。先端に72mm径のフィルター装着が可能だ。本レンズは大口径タイプなので、NDフィルターの装着に役立つ。

 

ロック機能付きのメタルキャップが付属する。フードを外した状態で装着可能。かすかにテーパーしたこだわりを感じさせる作りだ。

 

ピントリングはクラシカルなフォーカシングレバーを備える。オールドライカレンズのような佇まいだ。

 

描写面は開放描写に特徴がある。開放F1.5はわずかに滲みがあり、それがF2まで絞ると急激にシャープにある。オールドレンズ的な「開放でやわらかく、絞って硬く」というテイストを、F1.5とF2でスイッチのごとく切り替えられるのだ。絞るほどに硬くなるのではなく、約1段で一気に表情が変わる、メーカーによると、TTArtisan M21mm f/1.5は開放で収差を残すという設計をあえて採用したそうだ。オールドレンズ好きにはかなり気になる仕様である。

 

今回の実写はSIGMA fpを用いた。ライカLマウントのフルサイズミラーレスである。TTArtisan M21mm f/1.5はMマウントレンズなので、最短撮影距離が0.7mと長めだ。しかし、ミラーレスとの組み合わせなら、マクロアダプターを併用して最短撮影距離を稼げる。ここではライカMマクロアダプター、SHOTEN LM-L.SL MACROを組み合わせて撮影した。こうした自由度はミラーレスの十八番であり、同時にMマウントレンズの汎用性の高さとも言えるだろう。

 

マクロアダプターのSHOTEN LM-L.SL MACROでSIGMA fpに装着した。マウントアダプターのヘリコイドを繰り出すことで、レンズの最短を超えて接写できる。

 

cam-in製のストラップを組み合わせた。アクリルテープを使ったカラーバリエーション豊富なストラップだ。

 

取り付け部はレザーベルトの編み込み式だ。SIGMA fpのストラップ取り付け金具はスリット式だが、このストラップなら問題なく装着できる。

 

実写してみると、メーカーのアナウンス通り、開放はほのかに滲みをともなう。とは言え、コントラストは開放からしっかりしており、ゆるいという印象は薄い。あくまでも適度なやわらかさといった写りだ。近接開放だと滲みとボケが合わさり、雰囲気のある描写を得やすい。周辺光量落ちは多少あるものの、F2.8あたりでおおむね解消する。歪曲はほぼ気にならず、根本的に素性の良いレンズだ。

 

これまでTTArtisanシリーズは高性能重視に徹してきた。あえて開放で収差を残したTTArtisan M21mm f/1.5、レンズフリークの目にはどう映るだろうか。

 

SIGMA fp + TTArtisan M21mm f/1.5 絞り優先AE F1.5 1/5000秒 ISO100 AWB RAW 右上から伸びる信号機がいかにも超広角らしい描き方だ。開放の周辺光量落ちが青空のグラデーションに興を添える。

 

SIGMA fp + TTArtisan M21mm f/1.5 絞り優先AE F1.5 1/320秒 ISO100 AWB RAW 下段の陶器に開放でピントを合わせる。やわらかいピント面とボケが合わさり、穏やかな描き方だ。

 

SIGMA fp + TTArtisan M21mm f/1.5 絞り優先AE F1.5 1/1250秒 ISO100 AWB RAW 開放でサインポールを撮影。ワイドアングルなのに背景が大きくボケているのがわかるだろう。これが大口径超広角のアドバンテージだ。

 

SIGMA fp + TTArtisan M21mm f/1.5 絞り優先AE F1.5 1/1000秒 -0.7EV ISO100 AWB RAW 錆びた郵便受けに寄って撮影した。背景がうっすらとボケる一方で、電柱の影が長く伸び、広角で撮っていることを印象付ける。

 

SIGMA fp + TTArtisan M21mm f/1.5 絞り優先AE F2 1/500秒 ISO100 AWB RAW マクロアダプターのヘリコイドを繰り出し、スクーターのスピードメーターをクローズアップした。こういう撮影はM型ライカではできない。ミラーレスの特権だ。

SIGMA fp + TTArtisan M21mm f/1.5 絞り優先AE F2.8 1/2500秒 ISO100 AWB RAW 西日で輝く川面を捉える。2段絞っての撮影で、ハイライト部分の色収差はほぼ気にならない。

 

SIGMA fp + TTArtisan M21mm f/1.5 絞り優先AE F8 1/200秒 ISO100 AWB RAW 大樹を画面いっぱいに写し込む。隅々までシャープで解像力にすぐれたレンズであることが伝わってくる。

 


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