銘匠光学から大口径タイプのTTArtisan M35mm f/1.4・ASPHが登場した。TTArtisanは2019年6月に誕生した新しいレンズブランドで、高性能なライカMマウントレンズに特化している。ハイエンドモデルとしてどのような性能を秘めているのか。また、ライカ用レンズだけに造形やデザインも気になる。TTArtisan M35mm f/1.4・ASPHの実写レポートをお届けしよう。
本レンズは非球面レンズを含む7群8枚の大口径タイプの35ミリレンズだ。ライカMマウントを採用し、距離計連動に対応する。距離計連動調整機能を搭載し、手持ちのM型ライカに合わせて距離計連動精度を調整できる。今回、未調整のままライカM10で使ってみたが、近接開放はいくぶんシビアなものの、通常撮影はレンジファインダーで快適に撮影できた。ピントリングと絞りリングにそれぞれレバーを装備し、球面ズミルックス(初期型のSummilux-M 35mmF1.4)へのリスペクトが感じられる。絞りリングは半段刻みで、ピントリングは適度な重みがあった。MFレンズとしてていねいな造形と言えるだろう。なお、本レンズはブラックとシルバーの2色展開だ。所有するM型ライカに合わせて鏡胴カラーを選択しよう。
デザイン面で特徴的なのがレンズフードだ。本レンズはスクリュー式の金属製角型フードが付属する。向かって右上にスリットがあり、レンジファインダーでの使用に最適化されたフードだ。スクリュー式を採用しているため、鏡胴と一体感がある。また、金属製のフロントキャップが付属し、フードの上からかぶせることが可能だ。ライカ用レンズということもあり、ディテールに様々なこだわりが感じられる。
描写については、まず開放の切れ味の良さを評価したい。開放から滲むことなく、被写体のアウトラインを鋭利に切り出す。コントラストの付き方も良好で、開放を積極的に使っていけるレンズだ。周辺光量落ちは1段絞ると解消する。歪曲もさほど気にならない。反面、ネガティブな部分を挙げると、色収差が多少残る。また、逆光時にフレアやゴーストが気になる場面があった。ただ、このあたりはオールドレンズ好きだとご褒美みたいなものなので、使い手の好み次第だろう。
35mm F1.4で開放が使える。これはスナップで大きなボケが楽しめることを意味する。表現の幅が広がり、このレンズを選ぶ大きな動機付けになるだろう。反面、開放は周辺部の描写がいくぶん甘い。それを踏まえた上でのフレーミングが、このレンズを我がものにするコツといったところだろうか。