七工匠から4本目となるライカMマウントレンズ、7Artisans 75mm F1.25が登場した。勘の良い人はもうお気づきだろう。ライカの現行レンズ、Noctilux-M F1.25/75mm ASPH.と同スペックのレンズだ。無論、ノクティルックスと同等ということではないが、超弩級の大口径中望遠レンズの登場である。描写、操作性、ノクティルックスとの対比など、多面的に本レンズの実力を見ていこう。
まず操作性からだ。本レンズはライカMマウントの7Artisansシリーズの中でもっとも大きくて重い。それでも本家ノクティルックスと比べればひとまわり以上コンパクトだ。75ミリF1.25という突出したスペックを、ハンドリングしやすいサイズにうまくまとめている。
本レンズは距離計連動に対応しており、従来製品と同様、距離計連動の調整機能を備えている。付属の六角レンズでネジを緩め、前ピン後ピンを調整する仕様だ。75ミリF1.25の極浅被写界深度を思うと、距離計連動調整はぜひとも済ませておきたい。調整したところで開放ジャスピンは相当困難だが、中遠距離での撮影ならそれなりの歩留まりに収まってくるだろう。基本的にはライブビューで拡大表示を使い、ていねいにピント合わせしたい。今回、ライカM10の背面液晶でピントを合わせたが、できればEVFがほしかった。それくらいシビアなピント合わせだ。
描写についてひと言でまとめると、正統派画質と言えるだろう。同社ファーストプロダクトの7Artisans 50mm F1.1はクセ玉として一部のマニアの間で人気を博した。一方、7Artisans 28mm F1.4は高画質な大口径広角レンズとして7Artisansシリーズの新たな側面を見せてくれた。そしてこの7Atrisans 75mm F1.25は、28ミリF1.4と同様、高画質指向な仕上がりだ。開放は滲みを抑え、中心部だけでなく、周辺部分でもしっかりと解像する。ポートレートで様々な構図をとっても、開放でちゃんとピンがくるレンズだ。ボケについは、後ボケは総じておだやかで、前ボケはシーンによってぐるぐるボケっぽくなることがあった。そのため撮影状況によっては絵画的なボケになることがあり、このレンズの個性のひとつと言えるだろう。
さて、誰もが気になるNoctilux-M F1.25/75mm ASPH.との対比はどうだろう。Noctilux-M F1.25/75mm ASPH.というレンズは、開放描写が抜きん出ている。開放に滲みがないのは当然として、肌のきめを緻密に描き切るほどの解像力だ。コントラストも開放からしっかりしていて、一切の妥協がない。こうしたスーパーレンズと比べると、7Atrisans 75mm F1.25の開放はナチュラルな柔らかさがある。滲みはよく抑えられているが、ゼロとは言い難い。コントラストもいくぶんマイルドだ。無論、こうした描写は絞り込むほどに硬くなるのだが、開放については双方でそれなりに差があることを知っておこう。
そうしたこと踏まえ、7Atrisans 75mm F1.25は表情豊かなレンズだと言える。開放のさりげない柔らかさ、期せずして絵画的になるボケ。クセ玉というほどではないが、このレンズならではの描き方が感じられる。精緻な描写という点ではNoctilux-M F1.25/75mm ASPH.に軍配が上がるが、写真の楽しさを教えてくれるは、案外7Atrisans 75mm F1.25のようなレンズかもしれない。
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