【HarQの使えばわかる】TTArtisan AF 35mm F1.8 II X であじさい記

TTArtisan AF 35mm F1.8 X

Xマウントの35mmを考える

散々言われてる「標準画角云々」はともかく、FUJIFILM X において「35mm」というのは重要な焦点距離である。

純正の XF 35mm f1.4 は、X 最初のレンズの1本だし、XF 35mm f2 は防塵防滴で素晴らしい描写を誇るし、XC 35mm F2 も良い描写をするCPの高いレンズ。そこにサードパーティレンズとして割り込むわけだから結構な勇気である。そして、TTArtisan AF 35mm F1.8 X も既にII型のマイナーチェンジ版である。個人的に大きな改良点は「最短撮影距離が短くなった」という点。これは大きい。撮影していてもっともストレスのたまる事象は”これ以上寄れない”である。とくに、汎用性の高い35mmだとそのストレスに出会う確率が高い。AFが速いかどうかよりよっぽど重要な要素である。


早速撮影してみよう。いつものように、最初は手近にいる家のニャンズが被写体となる。今どきのAFレンズで問題になる描写などしないし、開放から十分な画質が確保されていることが良くわかる。

F1.8 開放で撮影

F1.8 開放で撮影 / KENはいつも傍にいるのです。

F1.8 開放で撮影

F1.8 開放で撮影 / ブッチは昼間は庭で見張りをしている(はず)

時節柄「あじさい」を撮る目的で数か所出かけてみた。

[ 長弓寺 ]

この時はまだ少し早かったのだが、小雨降る絶好の天候条件である。ちなみに「撮影者の不快指数が上がるといい写真が撮れる指数が上がる」という定説があるが、それはきっと都市伝説だと思いたい。

長弓寺のありがたいところは、 駐車場が無料で、株数は多くないもののあじさい撮影に拝観料が不要な点である。

F2で撮影

F2で撮影 / 暗い緑の後ボケがキレイに描写された。

F4で撮影

F4で撮影 / 緑の葉との色のコンビネーションがいい感じ。

F2.8で撮影

F2.8で撮影 / あじさいを撮りに行ってるはずが、雨滴の虫食いの葉にピントを合わせてる。

F4で撮影

F4で撮影 / 背景を分かる程度にぼかす撮影では、F4を多用する。


時期が少し早かった【長弓寺】から帰宅したら、近所と我が庭のあじさいも撮っておく。

F4で撮影

F4で撮影 / 子供の頃からほとんど変わらない近所の路地風景である。


F4で撮影

F4で撮影 / 我が家に一株だけ植わっているヤマアジサイ。


F1.8開放で撮影

F1.8開放で撮影 / 庭に鬱蒼と生えているシダの雨上がりを狙って。


[ 矢田寺 ]

奈良では「あじさい寺」と称されるお寺。しかし、そう称される寺は日本全国にあるのである。それにしても、ここに限らずだが、昨今の物価上昇に伴って、周辺駐車場も境内への拝観料も上がってしまったのが残念。

F4で撮影

F4で撮影 / 縦にあじさいを並べて、石垣と家屋の端っこを背景にする。

F4で撮影

F4で撮影 / 漆喰&焼板の壁があると背景に持っていきたくなる。

F4で撮影

F4で撮影 / 背景を暗く落として引き算してみる。

F4で撮影

F4で撮影 / 境内の地蔵と合わせて矢田寺らしい構図にしてみる。

F1.8開放で撮影

F1.8開放で撮影 / 前後感を重視する開放で透明感を引き出す。開放時の描写力が物を言うシーン。

F1.8開放で撮影

F1.8開放で撮影 / 手水舎の水を撮ったのだが、出口がただの塩ビパイプだったのが残念。でも、水の質感はよく出ている。

F4で撮影

F4で撮影 / そういえば「あじさい」を撮りに来たはずだったのだが….。F4で穏やかな被写界深度としてシダの質感描写も得つつ立体感も出す。


[ 岩船寺 ]

京都府の最も奈良よりの山寺である岩船寺。ほぼ奈良市である(違うけど)。私の自宅から”柳生の里”へ行くよりもよっぽど近いのである。

F4で撮影

F4で撮影 / フェンスからのあじさいは個人的にここの名あじさいである(駐車場)。こういう構図だと歪曲が出てくると不自然に描写されることになるが、問題ないようだ(フェンスの曲がりはオリジナルの曲がり)。

F8で撮影

F8で撮影 / APS-Cの良いところはF8で結構絞れている点。フルサイズならF10程度には絞らないといけない。

F8で撮影

F8で撮影 / 当然 F8でも距離の違いでボケるとはいえ、背景の構図を意図したボケ程度で収まる。

F4で撮影

F4で撮影 / 和傘と鉢植えのあじさいでディスプレイされていたのに便乗して撮影。なんとなくオシャレである。

F1.8開放で撮影

F1.8開放で撮影 / 特徴的なぐるぐるボケを意識して逆光気味で構図してみた。パステル色が少しカワイイが私はおじさんである。

F8で撮影

F8で撮影 / 線は線としてしっかり描写する。しっかり使えるレンズだ。という印象(あじさいにそろそろ飽きてきている)。

F8で撮影

F8で撮影 / 苔とともにあじさいを。あじさいの向こう側は古い手水鉢の水面。

F2.8で撮影

F2.8で撮影 / 岩船寺を出て青カエデの葉の背景に山門を。

f2,8で撮影

F2,8で撮影 / ついでに青カエデの写真も撮る(あじさいを忘れている)。


[ 般若寺 ]

岩船寺からの帰り道にある”般若寺”。ここも秋桜で有名な花の寺と称される小さなお寺。あじさいも咲くので寄ってみる。

F4で撮影

F4で撮影 / あじさいボールというらしい。透明なガラスのボールに水が満たされて、そこにあじさいの花が入っている。写す方向を間違えるとセルフ撮影になってしまうが、そんな写真は誰も喜ばないのである。濡れたあじさいの質感が出ればOKである。

F4で撮影

F4で撮影 / 秋桜は秋の花ではあるが、ここでは早咲きもさせている。後ボケの仏塔は見ようによっては不気味に感じられるかもしれないが、奈良市民にとって仏教建築物は日常である。

F4で撮影

F4で撮影 / 雨上がりだった紫陽花の葉の緑の深さの差し色にあじさいのピンク。

F4で撮影

F4で撮影 / 「間」を意識して構図。決して「魔」ではない。


あじさい以外にも料理を撮ったり、他の家の猫を撮ったりもして使いやすいレンズである印象を持った。Xにおける 35mm は付けっぱなしにする確率の高いレンズだけに、少しでも使いにくいと思えば外してしまうので、付けっぱなしにしているということは「使いやすい」ということなのだと思う。

まとめ:TTArtisan AF 35mm F1.8 X の感想
  • 外装仕上:品質感がある。シンプルなデザインでXシリーズに合う。軽い。安っぽくない。
  • 大きさ:コンパクトである。パンケーキとは言わないまでもバッグ内で邪魔をしない大きさ。
  • フード:浅い。広角レンズのような浅いデザインでフードの役割を十分に果たしてるかどうかわからない。
  • AF性能:普通である。速いとは思わないが、不足もない。
  • 描写性能:中央部は開放からシャープに入るし、周辺部も解像力がある。四隅も絞れば十分である。ボケは撮りようによってぐるぐるボケを出すことができるので遊べる部分もある。
  • 逆光:太陽などを構図や構図周辺に入れるとゴーストは出る。それも表現に使えということだろう。
  • USBドック:リアキャップがファームアップなどに使えるUSB-C端子を内蔵してるドックを兼ねているんだが、これは正直使いにくい。リアキャップは他のレンズと使い回すのである。無くすことは無いが行方不明になりかねない。TTArtisanのAFレンズだけ使うのなら問題はないのだが。。。
  • 結論:廉価だし、描写は良いし、35mmを購入予定なら候補にいれるべきレンズだと思う。

写真家:HarQ Yamaguchi

奈良県在住。ソフトウェアエンジニア出身のフォトグラファー。人物、風景、静物、古寺、樹木と多岐にわたる撮影を行い、作品は風景と人物を融合したコンセプトを中心に撮影を行う。


掲載された商品の詳細はこちら



・個人情報について ・サイトポリシー ・推奨環境

Copyright(C) Shoten Kobo Corporation
All Rights Reserved.