LIGHT LENS LABから「LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 Rigid-SPII」(愛称:周リジッド)というレンズが発売された。
このレンズは、1956年に製造された“LEICA Summicron 50mm F2 1st Rigid” の後期型の鏡筒デザインと、1940年代のシネマレンズであるCooke製 “Speed Panchro 50mm F2 Series II” を再現したモデルだ。レンズ構成は5群7枚のダブルガウスタイプ。
クック製のレンズは中国ですごく人気が高いらしく、今回の「周リジッド」は、外見はライカで中身はクックレンズという、日本ではちょっと考えられない面白い造りになっている。自身も様々なライカレンズを使ったことはあるが、クックの再現レンズは初体験なので、そのあたりも今回の試写で楽しめた。
撮影・文:一色卓丸
モデル:Anne
ヘアメイク:大見萌夏
協力:藤井智司
本文のポートレート作例はLEICA M10-R で撮影しているが、クラシカルな佇まいのシルバーのLEICA M9-P に LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 Rigid-SP II を装着してみた。小型レンズでも真鍮製でずっしりとした重厚感があり、特徴的なローレットや指標の刻印、無限遠ロック機構などもクラシカルなライカボディとの組み合わせはとても似合う。
「LIGHT LENS LAB M 50mm f/2 Rigid-SP II」には、レンズフードは付属していない。試しにライカのズミクロン50mm用フード「ITDOO」を取り付けてみた。なんとフードを装着すると、さらにライカのオールドレンズのように見えて楽しい。
開放値F2.0のボケ過ぎない自然な柔らかい描写は、ポートレートでも使いやすい。ピントを合わせた顔のあたり、髪の毛一本一本がわかる繊細な描写が驚きだ。マルチコーティングの色ノリも良く、クラシカルな感じも美しい。コントラストはそれほど高くなく、中間調の色情報が豊富な描写も、シネマレンズの再現性なのか。
またバラや金髪の明るい露出がオーバーなハイライト部はじんわりと滲む感じもあえて絵作りに活かすと面白い。
明るい紫陽花や髪の毛は柔らかく滲んでいるが線の描写は細かく解像されている。逆に背景のボケはベタっとした油絵のような強い描写なのも面白い。繊細さと大胆さが共存するレンズなのかと思った。
最短撮影距離は0.7mでf2.0開放だとピント合わせはシビアになるが、ピント面はすごい解像感があり、近接撮影での周辺のボケ感からピントを合わせた彼女の青い目に吸い込まれそうになる。背景の光の玉ボケも割と大きく、ざわざわと連なるオールドレンズらしい描写だ。
中距離と近距離の撮り比べもしてみた。開放f2.0だと中距離くらいでも人物の浮き出るような立体感があり、周辺のボケ感も楽しめる。3枚目の近接の人物の解像感と背景のボケのバランスもすごく美しい。
f2.0からf4.0までの撮り比べ。やはり開放f2.0だと光が当たるハイライト部が滲む感じになった。f2.8からf4.0になると滲みはなくなり、前ボケも背景のボケも被写体に馴染みしっかりとした描写に収まった。
「LIGHT LENS LAB M50mm f/2 Rigid-SP II」は、見た目はライカのズミクロンリジッド、写りはクックレンズというとても面白いレンズだった。中央部の描写は、美しく繊細で、被写体の立体感と周辺のボケによってダイナミックな雰囲気を簡単に得ることができた。Mマウントで、シネレンズの名玉のような描写が得られるのは、LIGHT LENS LABの真骨頂だ。