数多くのマウントアダプタを提供するSHOTEN(ショウテン)から、ユーザーの度肝を抜いたマウントアダプタが登場した。 それが、SHOTEN R50シリーズだ。一眼レフカメラの焦点距離50mmレンズをレンジファインダー機で距離計連動させるという単純なアダプタなのだが、それを企画、開発しリリースにこぎつけたというのがまず賞賛に値するだろう。そのピント精度は?使い勝手は?50mm以外のレンズも使えるの?など様々な疑問があると思うが、細かく解説していこう。
SHOTEN R50は普通のマウントアダプタと何が違うの?と疑問に思うユーザーのためにわかりやすく説明しよう。本アダプタは、ヤシカコンタックスやM42といった一眼レフのレンズをLeica Mマウントのボディに接続するアダプタだ。言ってしまえばそれだけである。もちろんこれだけの機能を持つアダプタは過去大量にリリースされているし、近年のデジタルLeicaであればLVやEVFを使えばピントを合わせるのは容易である。だが、今までのアダプタは、いわゆるファインダーを覗いて二重像を合わせる「通常の」ピント合わせはできなかった。このアダプタの売りは、他のLeicaレンズ同様ファインダーを覗いて、「通常の」撮影ができるということ、これに尽きる。TakumaをヤシコンPlanarを距離計連動させて使うことができるのだ。そのメリットを享受できるのはデジタルLeicaだけではない、距離計連動するということは、フィルムLeicaにも使える。Leica M6とPlanar 50mm F1.4を組み合わせれば1980年代に活躍した銘機、銘玉のメーカーを跨いだコラボも実現可能なのである。とは言っても、開放1.4でピント合うの?と疑問視するユーザーもいるだろう。筆者も使うまでは半信半疑だったが、これはイケル…!と確信したのがその精度なのである。
Leicaユーザーでシネレンズや改造レンズ好きな方は、過去、距離計が連動するアダプタを使ってみたという方も多いのではと考える。筆者もそのうちの一人で、無限遠を超過してしまうオーバーインフ気味にアダプタが設定されていることが多く、あくまで距離計連動は使えるが精度は高いとは言えず、LVやEVFを使ってねというスタンスがほとんどだと感じた。今回感銘を受けたのは、レンズの無限遠とアダプタの無限遠がしっかりと合致していたことだ。もちろん、PlanarやTakumarは50年選手でガタが来ているものもあり、すべてのレンズが合うわけではないが、少なくともフィルムカメラで撮ってもしっかり無限遠が出ている筆者のPlanarは問題なかった。無限遠で距離計も連動しピントがしっかり合う、これほど気持ちの良いものはないとLeica使いの皆さんには共感いただけるだろう。レンズにガタが来ている場合でも、大きな問題はない。LVが使えるデジタルLeicaであれば、LVでレンズの無限遠を確認し、テープなどで固定してしまえばピントを気にせず使える。これについては、澤村氏が執筆されている記事 を参考いただきたい。更にアダプタにも距離計調整機能がついており、マニュアルに沿って対応することでピントの微調整が可能である。ただし、筆者が持っているヤシカコンタックス、M42、Nikon Fの50㎜レンズで数本試したが、無限遠がずれているものはなかった。それだけ、マウントアダプタの精度は高いと言っていいのではないだろうか。
更に強みと言えるのが、ヘリコイド付きアダプタおなじみのマクロ機能が備わっている点だ。レンジファインダーはその性質上、最短0.7m程度がピント合わせの限界で、寄って撮影することはできない。そのため、Leicaレンズのほとんどは最短撮影距離0.7~1mに設定されており、テーブルフォトは撮らない(人によってはカメラすら出さない)というのがLeicaユーザーのスタンスだ。だが、このアダプタは違う。距離計連動させつつ、0.7mを超えて寄りたい場合は、レンズ側のヘリコイドを最短まで持って行くことで、いわゆるマクロ的な撮影が可能になる。Leicaで寄って撮影するなんて…という方もいるかもしれないが、寄れるのは正義と声を大にして言いたい。Leicaユーザーだって本当は皆と同じようにカメラを出してテーブルフォトが撮りたい!と言う皆さんの心の声をここで代弁しておく。 距離計連動させながら、時には寄って撮影もできるのは撮影の幅も広がりメリットであると言えるだろう。この機能はフィルム機で使うことは難しいため、デジタルLeicaのLV又はEVFと組み合わせて使用しよう。
R50という製品だが、50mmレンズ以外も使えるのでは?とい疑問を持つ方も多いと思う。 85㎜とは言わないまでも、55㎜だったら?と淡い期待を持たれるかもしれないが、使えないというのが答えだ。マウントはできるが、距離計連動以前に無限遠ですらピントも合わないため、50㎜レンズ専用と割り切るほかない。Leicaと言えば35㎜レンズを使いたいという方も多いと思うので、後続製品の発売も待ちたいところだ。
さてここからは、Leica M10とCarl Zeiss Planar 50mm F1.4とPENTAX Super-Takumar 50mm F1.4を使って撮影した作例を紹介して行く。すべてレンジファインダーで撮影しており、現像はRAWからストレート現像で、露出以外の調整は行っていない。いわゆるデジタルライカとそれぞれのレンズのほぼ素の状態を公開していく。
LVやEVFを使えば、本アダプタは特に必要ないのではと思う方もいらっしゃるかもしれないが、レンジファインダーで撮影することによる撮影体験、メリットは大きいと考える。Leicaユーザーの皆さんにとって釈迦に説法ではあるが、ファインダーから覗く現実世界の動きを予測し、最高の一瞬を切り取るという行為は、一眼レフやEVFにはない体験だ。レンジファインダーだからこそ撮る、レンジファインダーが持つ特有のラフさを享受したいなど、ユーザーにとってメリットは様々で、Leicaを使う我々だからこそ理解している部分だろう。一眼レフの銘玉をレンジファインダーで使用、写真に落とし込むことで、一眼レフでは得ることのできなかった結果を享受する。SHOTEN R50を通して、今まででは成しえなかった瞬間を味わってみてはいかがだろうか。