一色卓丸|F0.95で創る非日常的なポートレート 中一光学 SPEEDMASTER 50mm F0.95 M

 

中一光学から大口径レンズ『SPEEDMASTER 50mm F0.95』で待望のライカMマウントが発売された。昨年すでにEFマウントの『SPEEDMASTER 50mm F0.95』は発売されていたが、今回のMマウントは金属鏡胴の外見もライカノクティルックス50mm F0.95を踏襲したようなデザインに変わり、ライカM10-Pにつけても違和感がない重厚な造りだ。
また現行ライカノクティルックス50mm F0.95は100万円超えなのに対して、SPEEDMASTER 50mm F0.95は9万円程。F0.95の被写界深度が体験できるレンズが、リーズナブルに手に入る。今回、この『SPEEDMASTER 50mm F0.95 M』でポートレート撮影を行い、驚愕のF0.95の描写を体験してみた。

 

撮影協力:BOOK AND BED TOKYO
Model:Tsuyaka(ヘアーメイク 伊是名扶美、スタイリング 野俣海人)、柊里杏
撮影・文:一色卓丸

ファッションシューティング

ファッションシューティングで使用するにあたり、ライカM10-Pに装着して、まずはF0.95の開放のみで撮影。このシューティングでは、非日常感のある絵が求められていたので、あえて店内の電球照明の色被りを活かし、映画のような色気のある描写を目指した。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO400  F0.95  1/350秒  AWB RAW)

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO400  F0.95  1/250秒  AWB RAW)

 

狭い店内で標準50mmの距離感でもF0.95のボケ感ですぐ後ろの本棚も大きくボケ、照明の光も滲んで広がり、人物が浮き出るような絵になった。人間の目より明るいと言われるF0.95なので、ライブビューで拡大表示をしてピーキング機能でピントを合わせて撮影するが、やはりピント合わせはシビアになる。それでもピントリングの距離指標は、1mから2mの間が全体の距離指標の半分くらいを占めているので、近距離でのポートレート撮影で人物の瞳になどに厳密なピント合わせができる造りだ。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO400  F0.95  1/250秒  AWB RAW)
このような大口径レンズは、近接撮影時に特に大きなボケが活かせるので、最短撮影距離に近づくと大きくとろけるような描写が得られる。ピントの合った目の辺りも少し滲んではいるが、睫毛などの線はしっかり出ている。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO800  F0.95  1/250秒  AWB RAW)
狭い店内でもF0.95のボケにかかれば、背景が溶けて見えないほどの非日常感を作ってくれる。人の目には見えないくらいな小さな光も逃さず、至る所に光のボケが写り込んでいるのが面白い。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO800  F0.95  1/500秒  AWB RAW)
前ボケも大きく綺麗にボケていて、人物の背景の後ろボケとのバランスも良い感じで人物の立体感を浮き立たせてくれた。店内の普通の照明の光がこれほどボケて演出的に写るのが癖になるほど面白かった。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO800  F0.95  1/500秒  AWB RAW)
また天井の照明の光を逆光にして撮影すると、柔らかいフレアが現れて、さらに幻想的な絵が作れた。このフレアの出方はライカのオールドレンズに近い雰囲気で、自分の好みにぴったりなフレアだった。

 

屋外・自然光での撮影

昨年の冬には、屋外の自然光でも撮影してみた。F0.95の開放撮影では、晴天過ぎると明るすぎてNDフィルターを使用することになるが、この日は曇りだったので、F0.95の開放撮影がダイレクトで楽しめた。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO100  F0.95  1/4000秒  AWB RAW)
ポートレートの上半身アップで標準50mmの撮影距離でこれだけ大きくボケさせるのは、さすがのF0.95ならではの描写だ。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO100  F0.95  1/4000秒  AWB RAW)
日中の逆光撮影でも柔らかいフレアが写真全体を包み込むように現れて、流行りのソフトフィルターを使わずとも幻想的なソフトフォーカスの絵が簡単に作れる。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO200  F0.95  1/4000秒  AWB RAW)
横構図で撮影するとグルグルボケが分かりやすく見える。また明るい屋外の自然光の撮影だと大口径レンズならではの周辺光量落ちも分かりやすい。周辺光量落ちも自然な感じなので作品に落ち着きを作ってくれている。何でもない普通の場所の撮影でもF0.95は非日常的なポートレートに変えてしまう。

 

夜の撮影

SPEEDMASTER 50mm F0.95 Mの開放F0.95が最大に活かせる夜ポートレートも試してみた。暗い中でもF0.95なら低感度で撮影できるので、高感度で発生する嫌なノイズも出にくく、しっとりとした夜の空気感が写せる気がした。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO400  F0.95  1/350秒  AWB RAW)
普通に写すと少しうるさく見える商店街のカラフルなネオン看板も幻想的に大きくボケている。 もちろん夜もライブビュー撮影のピーキング機能でピントを合わせて撮影するが、F0.95なので暗い中でのピント合わせもやはりシビアだった。

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO800  F0.95  1/350秒  AWB RAW)
大口径F0.95なら、夜の商店街の明かりだけでも漂う湯気の繊細な描写が写し込めて、写真に臨場感が生まれた。

 

TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH との比較

また、中一光学の『SPEEDMASTER 50mm F0.95 M』と同じ、50mm F0.95の銘匠光学(めいしょうこうがく)『TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH』を撮り比べてみた。

 

(左:銘匠光学 TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH 右:中一光学 SPEEDMASTER 50mm F0.95 M)

 

 

SPEEDMASTER 50mm F0.95 M 作例

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO800  F0.95  1/350秒  AWB RAW)

 

TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH 作例

Leica M10-P + TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH(ISO800  F0.95  1/350秒  AWB RAW)

 

開放撮影をそれぞれで試してみた。マニュアルフォーカスでの撮影なので、写りの厳密な違いはわかりづらいが、『SPEEDMASTER 50mm F0.95 M』の方が全体的に滲みがあるソフトな描写で、『TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH』は大きなボケ感の中にもピント面は若干シャープに見えた。またレンズの造りでは、『SPEEDMASTER 50mm F0.95 M』の最短距離が1mで、 『TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH』は0.7mという違いがある。

 

Leica M10-P + SPEEDMASTER 50mm F0.95 M(ISO100  F0.95  1/1500秒  AWB RAW) 撮影距離1m

 

TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH 作例

Leica M10-P + TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH(ISO100  F0.95  1/1500秒  AWB RAW) 撮影距離1m

 

『SPEEDMASTER 50mm F0.95 M』の撮影最短距離の1mに合わせて、F0.95開放撮影で、 『TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH』と比べてみた。やはり『SPEEDMASTER 50mm F0.95 Mの』方が滲みが大きく全体的に柔らかい印象を受けた。また『TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH』の0.7mの最短距離撮影にすると更に大きなボケ感を作れたので、その辺りは最短距離撮影の差と各々のレンズの設計の違いもあるかもしれない。

 

TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH 作例

Leica M10-P + TTArtisan 50mm f/0.95 ASPH(ISO100  F0.95  1/1500秒  AWB RAW)撮影距離0.7m

 

『SPEEDMASTER 50mm F0.95 M』は、そのF0.95の開放撮影では他の50mm標準レンズにはない独特の世界観が簡単に作れる大口径レンズなので、普段のポートレート撮影でも一瞬で非日常的な大きな変化をつけやすい特別な1本だ。

 


使用したレンズ


・個人情報について ・サイトポリシー ・推奨環境

Copyright(C) Shoten Kobo Corporation
All Rights Reserved.