鈴木 啓太|urbanのCamflixフィルムデジタイズアダプターで高画質デジタイズに挑戦

街を歩くと若いオシャレな男女がフィルムの一眼レフやレンジファインダー、コンパクトフィルムカメラを身に着けているのをよく見る。フィルムカメラブームが再燃して再度市民権を得たフィルムだが、最近ではフィルムだけの写真展なども増えてきており、フィルム回帰への流れも肌で感じることができるようになってきている。SNSへ投稿するのであれば、お店スキャンや家庭用スキャナーでも事足りるが、ハイアマチュアなどが写真展など大伸ばしでプリントする場合はスキャンの解像度及びピント精度が重要になってくる。そこで今回は、焦点工房の「Camflix フィルムデジタイズアダプターFDA-135及びFDA-120」を使った、大伸ばしのプリントにも耐えられるハイクオリティデジタイズについて紹介して行こう。

 

Camflixは、デジタルカメラとマクロレンズを使用してフィルムをデジタイズスキャンするための専用アクセサリー。対応フィルムは35mmフィルム用のほか120フィルム用(6×4.5~6×9)があり、それぞれ標準マクロレンズ用と中望遠マクロレンズ用が存在する。

135M

Camflix フィルムデジタイズアダプター 35mmフィルム用 FDA-135M
詳細はこちら

120M

Camflix フィルムデジタイズアダプター 中判フィルム用 FDA-120M
詳細はこちら

 

これらは推奨レンズも決まっているため、詳しくは上記詳細リンクを確認しよう。今回は、CANON EOS 6DとTAMRON SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD、中望遠マクロレンズ用FDA-135L及びFDA-120Lの組み合わせでデジタイズに挑戦してみた。

本体のアウターチューブの先端にフィルムホルダーをセットし、マクロレンズのフィルター枠にこれを接続する。対応するフィルター径は62mm。今回紹介するレンズの様にフィルター径が合わない場合、市販のフィルター径変換リング(ステップアップ・ステップダウンリング)を使用し調整を行う必要がある。

 

camflix使用方法

ステップアップ・ステップダウンリングを重ね付けしても問題ない。

 

セッティングを行ったのち、フィルムホルダーにスキャンしたいフィルムをセットする。ネガフィルムでもポジフィルムでも問題ないが、初めての方は色補正が簡単なポジフィルムで肩慣らしをするとよいだろう。もちろんネガフィルムでも、後半に紹介する補正手順通りに進めていけばポジ化することが可能だ。

Camflixの他にあると便利なサポートアイテムとして、LEDライト、三脚を挙げる。

LEDはフィルムをスキャンする際、太陽光やストロボの代わりになるアイテムだ。特にホワイトバランスが変更できるLEDがあればカメラボディと色温度を合わせることができ、品質の高いスキャンが可能になる。数千円からと低価格で販売されているものもあるため、自分の用途に合ったものを購入しよう。

 

camflix使用方法

LEDはホワイトバランス(WB)が調整できるものであると良い。ここでは5500Kに設定している。

 

三脚はカメラとLEDライトを平衡に保つのに便利なアイテム。同じ高さで作業を行うのに有効だが必須ではない。三脚を持っている方であれば使った方が楽にスキャンができるということを覚えておこう。

 

camflix使用方法

LEDライトとスキャンフィルムは平衡に保つのがポイント。

camflix使用方法

MFで正確にピントを合わせることでより高精細なスキャンを行うことができる。今回のカメラ設定は、ISO100、F8、SS1/30、WB5500Kとしている。

 

デジタイズを行った第一印象は解像度の高さだ。普段フラットヘッドスキャナーで自宅スキャンを行っている筆者だが、フラッドヘッドスキャナーは便利な反面、レンズにフォーカスを合わせる機能を持ち合わせていない。そのため、特に古いフィルムの場合フィルムの反り返り等が影響してスキャンフィルムに厳密にピントが合わないという事象が多々あり、どうしても眠い画像に見えてしまうという問題点があった。そのため、SNS等に用いる画像はお店スキャンのデータ(150万画素)を用いるのがほとんどだった。しかし35㎜フィルムはまだしも中判フィルムで撮った写真は、150万画素ではその真価が発揮しきれていないと感じ始めてきており、お店スキャンと自宅スキャンのジレンマに悩まされる日々を送っていた。

その点デジタイズは解像度面とピント面の問題を解決する、フィルムデジタル化のソリューションといえる。Camflix等デジタイズアダプタを使ったスキャン方法は、デジタルカメラのライブビューの拡大機能を使って厳密にピントを追い込めるのが大きな強みである。レンズによって絞り値における解像度のピークは異なるが、ほとんどのレンズで全面高解像度となるF5.6~F8程度に設定するのが良いだろう。ISOはそのカメラのベース感度を選択、SSはヒストグラムを表示させハイライトの白飛び及びシャドウの黒潰れがない範囲で設定するのがコツだ。もし手ブレ補正がついているボディやレンズを用いている場合は、三脚使用時どちらもオフにしておくのが誤作動を防ぐ意味でも無難だ。今回はPlaubel makina67という6×7の中判フィルムカメラで撮影したポジフィルムをスキャンしている。

 

それでは実際のスキャン結果を確認いただきたい。

 

camflixスキャン画像

6×7中判ポジフィルムスキャン(FUJIFULIM PROVIA100F)

 

camflixスキャン画像

中央部拡大

 

2000万画素程度のデジタルカメラの利用かつWeb掲載用に縮小しているが、これだけ解像度があれば、大伸ばしでプリントしたときの差は歴然だろう。なお4000万画素を超える高解像度のデジタルカメラでスキャンした場合、最も気を付けなければならないのがブレだ。ブレはシャッターボタン押下時にも発生するためケーブルレリーズを用いるか、本体機能のセルフタイマーを用いることで回避できる。精細なスキャンを行う場合必須と考えてよい。また、撮影したデータは色補正等行う必要があるため、フォーマットはRAWでの撮影を推奨する。

 

ポジフィルムにおける補正

ポジフィルムはスキャン時点で、ほぼ完成の画像に近づいているが、実際のポジフィルムとスキャンデータを比較するとやはり迫力が足りない。より実際のポジフィルムに近づけるためには現像ソフトで追い込む必要がある。今回はAdobe Lightroomを用いて、簡易補正を行った。

 

camflix ポジスキャン画像1

①スキャンしたRAWファイルを開く

 

camflix ポジスキャン画像2

②切り抜きを用いて、スキャン画像をトリミング

 

camflix ポジスキャン画像3

③色温度、色かぶり補正を行い、露光量、彩度を中心に最小限の補正を行う

 

camflix ポジスキャン比較

④補正前後比較

 

camflixスキャン画像

⑤完成画像

 

たったこれだけの工程で実際のポジフィルムに近いデータに仕上げることができたと思う。これをLightroomのプリセットとして保存しておくことで、今後の仕上げも簡単に行うことができるだろう。勿論、シャドウやハイライトなど個別の追い込みは必要となるが、このプリセットでほぼ満足のいく仕上がりとなるはずだ。

 

ネガフィルムにおける補正

さて、スキャンしてお分かりだと思うが、ネガフィルムはスキャンしただけでは正しい色にならない。いわゆるポジ化の処理が必要だ。今回はAdobe LightroomとPhotoshopを使用し、ネガフィルムの簡易ポジ化を行っていく。引き続きPlaubel makina67で撮影したカラーネガフィルムをスキャンしている。

 

camflix ネガスキャン画像1

①スキャンしたRAWファイルをLightroomで開く

 

camflix ネガスキャン画像2

camflix ネガスキャン画像3

②ホワイトバランスの選択で、ネガフィルムの未露光部分(写真が写っていない枠の部分)を選択しオレンジベースの除去を行う

 

camflix ネガスキャン画像3

③切り抜きを用いて、スキャン画像をトリミング

 

camflix ネガスキャン画像4

④「他のツールで編集」から「Adobe Photoshopで編集」を選択

 

camflix ネガスキャン画像5

⑤「イメージ」から「色調補正」>「諧調の反転」を選択

 

camflix ネガスキャン画像6

⑥「イメージ」から「自動トーン補正」を選択

 

camflix ネガスキャン画像7

⑦「イメージ」から「自動カラー補正」を選択

 

camflix ネガスキャン画像8

⑧「イメージ」から「自動コントラスト補正」を選択、Photoshopの編集を保存し、Lightroomに戻る(このままPhotoshopで調整してもOK)

 

camflix ネガスキャン画像9

⑨各種補正を行い色味を調整し、完成

 

camflix ネガスキャン画像10

⑩補正前後比較

 

⑪完成画像

 

ネガフィルムにおけるポジ化は、ユーザの好みをダイレクトに反映させることができるのが強みだ。カラーネガフィルムはフィルム自体に色が付いているため、上記②の工程の様にオレンジベースを除去する必要がある。今回は簡易的にフィルム周辺の未露光部分で除去を行ったが、本来はネガの0枚目など完全な未露光部分を用いて除去をするのが望ましい。なお、オレンジベースの除去を行わないと色調補正がしにくいため忘れずに行うようにしよう。


35㎜のカラーネガフィルムも上記工程と同じやり方でポジ化を行った。使用フィルムはPORTRA400。スキャン後の補正もPOTRAの透き通った色味が表現できるような補正を心掛けた。

 

35mmネガ ポートラ

補正前後比較

 

35ネガ現像

35㎜カラーネガフィルムスキャン(Kodak POTRA400)

 

筆者は現像店(ラボ)のラボマシンである富士フイルムの「Frontier」でスキャンしてもらった色味が好みなため、お店スキャンに近づけるような補正を行っている。筆者が利用しているラボはフィルムごとの色味を忠実に再現しているラボである。そのため、デジタイズにおいてもそのラボのカラーに合わせることでフィルム本来の色味に近づけることができる。お手本となるカラーがあれば編集しやすいため、お店スキャンのデータで気に入ったものを展示用にデジタイズするなど、それぞれの用途に合わせて活用していただきたい。

 

Camflix フィルムデジタイズアダプターはどんなカメラでも使いやすく最適化されており、使用できるマクロレンズも多いため初デジタイズにベストな製品といえる。自分で撮影したフィルムを自分で現像する楽しみをこの機会に是非、体験してみよう!


掲載された商品の詳細はこちら


・個人情報について ・サイトポリシー ・推奨環境

Copyright(C) Shoten Kobo Corporation
All Rights Reserved.